顧客が「なぜ買ったか」をアンケートで聞いても、表層の答えしか返ってきません。 顧客の購買理由が掴めない、ヒアリングで本音が取れない、と感じている事業者・担当者の方に向けて書いています。 LP100本以上の経験から見えた、購買の本音を引き出す3つの質問を解説します。


なぜアンケートでは「本音」が取れないのか

「アンケートで顧客の声を集めましょう」とよく言われますが、定型アンケートで取れるのは、ほぼ表層の答えだけです。理由は 3 つあります。

理由 1: 顧客自身も本音を言語化できていない

人は、自分が「なぜ買ったか」を完全に言語化できているわけではありません。感情で決めて、後から理屈で正当化するのが、購買行動の実態です。アンケートで質問されると、「正当化した理由」を答えてしまい、「決めた本当の理由」は出てきません。

理由 2: 選択肢式は事業者の仮説に閉じ込められる

選択肢式のアンケートは、事業者が想定した範囲の答えしか取れません。「価格」「機能」「サポート」のような選択肢を並べると、その中から選ばれます。事業者が想定していない理由(代表者の人柄・偶然の出会い・SNS の投稿など)は、永遠に拾えません。

理由 3: 質問の角度が「事業者目線」になる

「弊社の何が決め手でしたか?」のような自社目線の質問では、お客様は「答えやすい優等生の答え」を返します。「資料が分かりやすかった」「対応が早かった」など、本音ではなく社交辞令が並びます。


本音を引き出す3つの質問

LP100本以上の経験から、何度も使ってきた「本音を引き出す」質問を 3 つ紹介します。

質問 1:「もし弊社がなかったら、何を選んでいましたか?」

最も強力な質問です。「弊社の何が良かったか」ではなく「弊社がなかったら何を選ぶか」を聞きます。

この質問の意図は、「比較対象」と「代替案を選ばなかった理由」の 2 つを同時に引き出すことです。お客様は、無意識に競合との比較を頭の中で済ませた上で、弊社を選んでいます。その比較プロセスを言語化してもらいます。

返ってくる答えの例:

  • 「○○社と比べてました。○○社は価格は安いけど、サポートが弱そうで…」
  • 「実は外注しようか内製しようか迷ってました。内製だと結局時間が足りなくて…」
  • 「他に検討したのは知人の紹介で聞いた△△社ですが、対応が遅くて…」

これらの答えから、お客様が「弊社を選んだ理由」と「他社を選ばなかった理由」が同時に見えます。

質問 2:「弊社を選ぶ前、一番不安だったことは何ですか?」

2 つ目の質問は、「決断直前の不安」を引き出します。

高い買い物・検討期間が長い商材では、お客様は決断直前まで不安を抱えています。「失敗したくない」「思った効果が出なかったらどうしよう」「社内に説明できなくなったら困る」。これらの不安を、こちらから先に聞きます。

返ってくる答えの例:

  • 「正直、価格に見合う成果が出るか半信半疑でした」
  • 「営業マンの言うことを信じていいか迷ってました」
  • 「契約してから対応が悪くなる業者を以前に経験して、また同じことが起きないか不安でした」

これらの答えは、訴求改善・FAQ・お客様の声の素材として直接使えます。「不安だったが、こうして解消した」というストーリーで再構成すれば、検討段階の他のお客様にも刺さります。

質問 3:「契約の決め手は『理屈』と『感情』のどちらが大きかったですか?」

3 つ目の質問は、「決断の構造」を引き出します。

人は理屈と感情の両方で決めますが、最後の一押しがどちらだったかは、人によって違います。直接聞くと、お客様自身も振り返って言語化できます。

返ってくる答えの例:

  • 「正直、感情です。代表者と話して『この人になら任せられる』と感じました」
  • 「理屈です。提案書の数字を見て、ROI が成立すると判断しました」
  • 「両方ですが、最後は感情でした。理屈で詰めた後、最後に背中を押されたのは人柄でした」

この答えで、お客様が「何で動いたか」が見えてきます。理屈派が多いなら、提案書や数字訴求を強化。感情派が多いなら、代表者発信・お客様の声を強化、という判断ができます。


ヒアリングの設計と進め方

3 つの質問を効果的に使う、ヒアリングの設計を整理します。

ヒアリング対象の選び方

  • 最近 3〜6 ヶ月以内に契約した顧客(記憶が鮮明)
  • 契約金額・満足度の異なる 3〜5 人(偏りを避ける)
  • 「典型顧客」だけでなく「異色の顧客」も含める
  • 失注した顧客にもヒアリングできれば、より深い気づきが得られる

ヒアリングの場の作り方

  • 30〜45 分のオンライン or 対面ミーティング
  • 録画 or 録音の許可を取り、後で振り返れるようにする
  • 雑談から入り、本題に入る前に緊張を解く
  • 質問順は「導入の経緯 → 3 つの質問 → 導入後の変化」
  • 終了後にお礼の連絡と簡易まとめを送る(関係性の維持にも繋がる)

ヒアリング中の進め方

  • 質問を投げかけたら、最低 30 秒は待つ(沈黙を恐れない)
  • 表層の答えが出てきたら、「なぜそう感じたんですか?」で深掘り
  • 答えを誘導しない(中立的な相槌に留める)
  • メモは取りつつ、録画 / 録音に頼って会話に集中

ヒアリング後の整理

  • 録画 / 録音を聞き直し、本音と建前を切り分ける
  • 5 人分のヒアリングをまとめて、共通パターン・例外パターンを抽出
  • 「使えそうなお客様の言葉」を抜き出して、LP・コピー・営業資料に反映
  • 社内 Wiki やドキュメントに整理して、いつでも参照できる状態にする

ヒアリング結果を施策に活かす方法

ヒアリングは「集めて終わり」では意味がありません。施策に反映する手順を 3 ステップで整理します。

Step 1: 訴求軸の見直し

質問 1〜3 から見えた「比較対象」「不安」「決め手」を元に、LP の FV メインコピー・サブコピーを書き直します。

具体例:

  • 比較対象が「内製」 → 「外注 vs 内製」の比較で、外注を選ぶ理由を訴求
  • 不安が「成果が出るか不安」 → 「○○社の成果保証制度」のような訴求
  • 決め手が「代表者の人柄」 → 代表挨拶ページ・代表者 SNS を強化
  • 比較対象が「競合 A 社」 → A 社との違いを表で明示

Step 2: お客様の声の再構成

ヒアリング中に出てきた「お客様の生の言葉」を、お客様の声セクションに掲載します。事業者が書いたお客様の声は薄い。お客様自身が語った言葉は、圧倒的に強い。ヒアリングをお客様の声制作のプロセスとセットで設計するのも、効率の良いやり方です。

Step 3: 営業資料への反映

ヒアリングで見えた「不安パターン」を、営業資料の FAQ ページに反映します。検討段階のお客様が抱えている不安を、先回りで解消する資料設計になります。商談での会話の質も大きく変わります。「お客様の本音」を踏まえた営業ができれば、説得力が桁違いになります。


テマヒマ/平岡の視点

「顧客の声を聞きましょう」という言葉は、マーケティングの世界で耳タコのように繰り返されています。ですが、現場で本当に効くヒアリングをしている事業者は、本当に少ない。

LP100本以上を扱ってきた経験から強く感じるのは、「ヒアリングの質が、訴求の質を決める」ということです。表層のアンケートを 100 件集めるより、深掘りのヒアリングを 5 件取る方が、訴求改善の材料として圧倒的に強い。

「データと仮説の往復」は、定量データだけの世界ではありません。お客様の生の言葉を集めて、仮説を立て直す、というプロセスも「データと仮説の往復」です。GA4 の数字だけでなく、ヒアリングという定性データも合わせて見るのが、深いマーケティング判断の出発点です。

「迷わせない」原則は、ヒアリングの質問設計にも効きます。聞きたいことを 3 つに絞れば、お客様も答えやすく、こちらも整理しやすい。10 個・20 個と質問を並べると、お客様は疲弊し、答えの質が下がります。

中小企業がヒアリングをやらない理由の多くは、「忙しい」「お客様に時間を取らせるのが申し訳ない」です。これは誤解です。お客様の多くは、「自分の選んだ会社の改善に役立つ」と聞かれれば、喜んで時間を取ってくれます。むしろ、自分の購買経験を整理する機会として、ヒアリングを楽しむお客様すらいます。事業者側の「申し訳なさ」が、ヒアリングの実行を遅らせている最大の障壁です。

最後に 1 つ。ヒアリングは、半年〜1 年に 1 度の定期イベントとして組み込んでください。一度やって終わりではなく、市場・お客様・自社が変わる中で、定期的に最新の声を聞き続ける。これがマーケティングの感度を保つ秘訣です。

ヒアリングを社内文化として根付かせるには、ヒアリングログを共有可能なドキュメントにまとめる仕組みも有効です。LP 制作・広告・営業資料を作る時に、過去のヒアリングログから「お客様の言葉」を引用できる状態を作れば、社内の発信全体が「お客様の言葉ベース」に揃っていきます。事業者の頭の中の言葉ではなく、お客様の頭の中の言葉で発信できる組織が、最も強いマーケティング組織です。

そして、ヒアリングで集めた「お客様の言葉」は、LP・営業資料に貼り付ける時に、加工しすぎないことが大事です。事業者目線で言葉を綺麗にしすぎると、生の力が失われます。少し読みにくくても、お客様の言葉そのままを残す方が、説得力が圧倒的に強くなります。

3 つの質問を使ったヒアリングは、社内の誰でもできます。マーケ担当者だけでなく、営業・サポート・経営者が定期的にお客様の声を直接聞く機会を作ると、組織全体のお客様理解が深まります。属人化させず、複数人がヒアリングできる体制を作ってください。


よくある質問(FAQ)

質問回答
Q1. アンケートとヒアリングの使い分けは?アンケートは「広く浅く」、ヒアリングは「狭く深く」が役割です。両方を組み合わせて使うのが理想です。
Q2. ヒアリング対象者は何人くらい必要ですか?5 人で十分です。10 人を超えても、傾向は大きく変わりません。5 人で見えた共通パターンが、自社の顧客理解の核になります。
Q3. お客様に「ヒアリングさせてください」と依頼するハードルは?多くのお客様は快く応じてくれます。事業者が思っているより、お客様は協力的です。「サービス改善のため」と趣旨を伝えれば、ほぼ断られません。
Q4. 録画 / 録音は嫌がられませんか?趣旨を説明し、社内利用に限ることを伝えれば、ほぼ問題ありません。「振り返って参考にしたい」と伝えれば、むしろ前向きに応じてくれます。
Q5. ヒアリング結果が一致しない時はどう判断しますか?一致しない場合、顧客層が複数に分かれている可能性があります。属性別に整理し直すと、別パターンとして見えてきます。
Q6. ヒアリングの頻度はどのくらいが目安ですか?半年〜1 年に 1 回、5 人ずつが現実的なペースです。連続して短期間でやるより、定期的に間隔を置いて市場の変化を捉える方が効果的です。

関連記事

著者情報

平岡 大輔

株式会社テマヒマ 代表取締役 / マーケGYM主宰

事業会社と支援会社の両方で、20年以上マーケティングの現場を経験。著書『売れるランディングページ改善の法則』など、現場で培った判断基準をもとに発信しています。

20年以上の実務経験 LP100本以上の制作・改善 事業会社・支援会社の両側を経験
平岡大輔

マーケティングを、自社で判断できる状態へ。

マーケティング基盤の整理や改善サイクルづくりは、テマヒマのサービスページをご確認ください。

サービスを見る